『ドライブー・マイ・カー』は濱口竜介監督による商業長編2本目となる作品です。
村上春樹による同名短編小説をベースに、監督自ら脚本を手掛けた意欲作です。
カンヌ国際映画祭で4冠を達成!そのほか多くの映画賞で評価を集める『ドライブ・マイ・カー』をご紹介します。
・『ワーニャ叔父さん』をモチーフとした脚本
・「抑揚のない本読み」の元ネタ
作品情報
本記事の画像は『ドライブ・マイ・カー』オフィシャルサイト、映画.comよりお借りしています。
画像参照:映画.com
原題 | ドライブ・マイ・カー |
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製作 | 2021年(日本) |
配給 | ビターズ・エンド |
時間 | 179分 |
スタッフ
監督 | 濱口竜介 |
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脚本 | 濱口竜介 |
原作 | 村上春樹/『ドライブ・マイ・カー(「女のいない男たち」に収録)』 |
音楽 | 石橋英子 |
キャスト
西島秀俊(家福悠介) |
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三浦透子(渡利みさき) |
霧島れいか(家福音) |
岡田将生(高槻耕史) |
パク・ユリム(イ・ユナ) |
ジン・デヨン(コン・ユンス) |
本作主演の西島秀俊さんは、アジア人男性初の全米批評家協会賞主演男優賞を受賞しています。おめでとうございます!!
映画に登場する3つの短編小説『ドライブ・マイ・カー』『シェラザード』『木野』
『ドライブ・マイ・カー』は村上春樹の同名短編小説が原作とされていますが、ほか2つの短編小説の要素も盛り込んだ脚本になっています。
劇中に登場するエピソードやセリフの元ネタとなっているのが、『シェラザード』と『木野』という二つの短編小説です。ドライブ・マイ・カーを含めたこれら3つの短編は『女のいない男たち』という短編集に収録されています。
原作を読むと、映画脚本の巧みさがより実感できます。
『ワーニャ叔父さん』をモチーフとした脚本
原作のほか、本作でもう一つの下敷きとなっているのが戯曲『ワーニャ叔父さん』です。
『ワーニャ叔父さん』は、ロシアの作家アントン・チェーホフによる戯曲で、1897年の『チェーホフ戯曲集』に収録され、1899年10月26日にモスクワ芸術座で初演されました。
”ワーニャ叔父さん”のあらすじ
ソーニャと叔父のワーニャが切り盛りする土地に、領主セレブリャーコフが大学教授の職を辞して隠居を始めたところから物語は始まります。
ワーニャ叔父さんは、セレブリャーコフの若妻に実らぬ恋をしてしまう。
ソーニャもまた、セレブリャーコフの主治医アーストロフに想いを寄せるが、彼には別に想い人が。
恋慕により仕事も手につかぬ有様のワーニャは身の破滅をまねきかけましたが,ソーニャの説得により再び人生を歩んでいく希望を復活させます。
というのがざっくりとした筋です。
「絶望→忍耐→希望」というテーマを人生の象徴として「仕事」になぞらえた戯曲として、わたしは解釈しています。
「抑揚のない本読み」の元ネタ
本作に登場した「抑揚のない本読み」には元となるメソッドが存在します。
『ジャン・ルノワールの演技指導』という短編ドキュメンタリーの中で実践されていたもので、台詞から感じるニュアンスを徹底的に排除した状態でテキストに向き合う方法です。
濱口監督の『ハッピーアワー』でもこのメソッドを一部取り入れていたそうで、監督のパーソナルな体験が活かされたエピソードになっています。
本作自体、台本が芝居という表現へと変化する過程を表していてとても興味深かったです。
『ジャン・ルノワールの演技指導』はDVD『ジャン・ルノワールの小劇場』に特典映像として納められています。
『ドライブ・マイ・カー』の評価・感想
『ドライブマイカー』
コミュニケーションと他者理解の話ととらえ鑑賞しました。
対話で他人を理解する方法にショートカットはない。だがいつかたどり着けるという希望が、目的地へと向かうドライブに重なって観えました。
音の消えた世界の悲しさを一気に感じさせるラストドライブが忘れられない pic.twitter.com/gQYglGTRWz
— こま (@aoi_saru) March 2, 2022
おすすめ度 | 4.5 |
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ストーリー | ☆☆☆☆☆ |
音楽 | ☆☆☆☆ |
映像 | ☆☆☆☆ |
キャスト | ☆☆☆☆☆ |
5段階です
とても綿密に書きあげられた脚本に、かすかな緊張感の漂う演出で物語にぐいぐい引き込まれていきました。
ここからは、一部ネタバレも含みます。
ぜひ本編視聴後にご覧ください。
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