(本記事の画像は、映画.comおよび映像からお借りしています。)
作品情報
配給:ラブ&ポップ制作機構
上映時間:110分
監督:庵野監督
原作:村上龍
脚色:薩川昭夫
三輪明日美
希良梨
工藤浩乃
仲間由紀恵
浅野忠信
河瀬直美(声の出演)
石田彰(声の出演)
林原めぐみ(声の出演)
ほか
主人公、吉井裕美の心の声は、映画監督の河瀨直美が担当しています。
こんにちは。猿こまです(@aoi_saru)
今回は、庵野秀明監督の初実写作品『ラブ&ポップ』をご紹介します。
『シン・ウルトラマン』『シン・仮面ライダー』と話題の実写作品の公開を控える庵野秀明監督が、初めて実写映画のメガホンをとった作品です。
庵野作品おなじみのモチーフや表現が随所に確認できますので、未見の方には是非ご覧いただきたいです!
庵野秀明の実写2作目『式日』はコチラでレビューしています。
(以下、ネタバレを含みますので、映画視聴後に読んでいただくのがオススメです。)
『ラブ&ポップ』感想
原作小説→実写化が非常にスムーズに行われていました!
原作と映画どちらから入っても納得できます。
原作小説は村上龍のフィールドワーク取材をもとに綴られた作品。
その創作過程までなぞるかのように、観察者の視点で切り取られた映像。
2つの共鳴度はかなり高レベルです。
女子高生とオヤジの対立のなかで、「存在とその交わり」について描く庵野監督の考察をじっくり楽しみました。
(原作小説は「トパーズⅡ」というタイトルで発表されています。)
舞台は、エヴァンゲリオン劇場版公開日
本作の舞台は、1997年7月19日。エヴァンゲリオン劇場版の公開日です。
エヴァとラブ&ポップの世界は時系列の上で交差しています。
つまり、無関係な2つの世界が交わる構図を意図的に提示しているのです。
「女子高生はエヴァなんて興味ないでしょ。」という自虐にも感じました。
主人公のこころの声は別人
主人公のこころの声は本人ではなく、広瀬直美(映画監督)がナレーションをあてています。
声は、外面化しないもう一人の自分なのでしょうか。
自己同一性に言及するあたりは、やはり庵野監督らしいです。
主人公が援交で出会う二人も、電話とリアルで話し方が変わる人物でした。
『ラブ&ポップ』3つのカメラアングル
本作は、客観、主観、俯瞰3つの視点で構成されています。
さまざまなカメラアングルで、主人公の視点、主人公を見る相手の視点、第三の視点を提示しています。
特に第三の視点については、成人向けビデオの手法をお手本にしたと思われるカットが印象的でした。
後述する「消費されるもの」に対するアプローチとして採用したとも考えられます。
さまざまな視点から「女子高生」を観察しようと試みる庵野監督の視線を、ある意味いやらしいほどに感じます。
消費される映像
原作者の村上龍は、「アンディ・ウォーホルの作品のように書かれるべきだと思いながら、私はこの小説を書き始めた」とあとがきに記しています。
アンディ・ウォーホールといえば、「マリリン・モンロー」や「キャンベルスープの缶」に代表されるようなポップ・アートの先駆者です。
彼は、芸術家としての内面より、消費社会の表面的な普遍性を描いたことで知られています。
庵野監督が、徹底した観察者となった理由はここに帰結するのではないでしょうか。
監督のメッセージは、劇中のセリフにもよくあらわされていました。
「何かが欲しいとう思いをキープすることは、その何かが今の自分にはないという無力感をキープすること」
庵野監督もまた、決して触れられない彼女たちにたいする無力感を抱え続けていたのかも。
映画をつくることが、常にその無力感と対峙することだとしたら。
庵野秀明の苦悩を垣間見たようでもありました。
(つい庵野監督を投影してみてしまいます。)
エンディングの映像が象徴するもの
徹底して、交わることのないものを描いてきた本作。
主人公たち4人の女子高生も無自覚にそのことに気づき始めていました。
それぞれが独立した他人であることを意識しはじめたのです。
しかし、ラストシーンで主人公たち女子高生4人が渋谷川を勇ましく歩く姿には、孤独の寂しさよりも強さを感じます。
わかり合えないからこそ、両者の間に愛が生まれるのではないか。
ラストシーンからエンディングにかけては、庵野監督がだした観察の答えにみえました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は庵野秀明が初めて実写映画のメガホンをとった『ラブ&ポップ』をレビューしました。
『エヴァンゲリオンシリーズ』に代表されるような作家性の高い作品をいくつも世に出す庵野監督。
今後も『シン・ウルトラマン』『シン・仮面ライダー』と実写映画の公開が控えていますので、ぜひ合わせて楽しんでいただきたいです!
おしまい
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