『トムとジェリー』考察
まずなによりも気になっていたアニメと実写の融合、個人的には慣れるまで少し時間がありましたが、かなり違和感なく映像化されていると感じました。
技術の蓄積や多くのトライアンドエラーがあったことは想像に容易く、その結果として本作のような作品が生まれたことはとても素晴らしい!と思いました。
ここからはネタバレ含む考察です。
ぜひ本編鑑賞後にお読みください。
アニメと実写の共演がキレイ
アニメと実写が共存するシーンでは、映像技術のほかにも違和感を生じさせない工夫が感じられました。
例えばトムとケイラが同じ地面に立っているシーンがほとんどなく、たいていどちらかの足元が隠れていたり見切れているシーンが多い。
映画的なカメラワークの影響もあるでしょうがアニメと実写のギャップを軽減する役割も果たしていたように思います。
そのほかトムがリアルな帽子を被る姿が違和感なかったり、金魚と水槽の馴染み具合などもよかったです。
定番の天使と悪魔のシーンでは、槍やローブが実写よりなのも面白かった。
本作の世界が、メリーポピンズのように現実の世界と隔たりを持ったファンタジーなものとしてではなく、あくまでもリアルな存在として描かれたことは、トムとジェリーがいる!という喜びを感じさせてくれました。
唯一リアルな世界と線引きを感じたのは「血」
トムとジェリーはどれだけ暴れ回っても基本的に無傷なのに対して、リアルで血が流れたことに驚きました。
マネージャーのテレンスが猫に引っ掻かれた際に、血が出ているというセリフがあります(映像として傷は映らないし、大したケガではなかったですが)。
これが作中もっとも明確なアニメと現実の線引きであったと思います。
痛みも感じるし傷もつく「これは私たちが生きる現実の話なんです」というメッセージにも感じました。
それと同時にアニメキャラクターが人に影響を与えたことで、その境界を飛び越えた瞬間でもあり、興奮しました。
「いよいよカートゥーンの世界が私たちの世界に乗り込んでくる!!」
カートゥーンならではのありえないトラブル
当然リアル路線ではないので、現実ではありえない、カートゥーンアニメならではなのトンデモ展開が次から次に楽しませてくれます。
トムとジェリーのチェイスもそうですが、一般人がゾウをレンタルしたり、トラが首輪一本で登場したり、そもそもホテルのロビーが半壊して営業続行してたり。
アニマルトルネードなんて2回出てくるんだから!そこテンドンなんだ(笑)
そんなトラブル、現実なら「失敗」の一言では片付けらないでしょ?と思うんですが、こんな大きな失敗はフィクションでないとなかなかできない。
「そういう追体験としても映画ってやっぱいいなぁ」と感慨深い気持ちにもなりました。
「本気で喧嘩できる関係」トムとジェリーの再定義
ネコとネズミが喧嘩するだけの「トムとジェリー」ってなにが面白いの?っていう所を分かりやすく再定義してくれたのも本作のポイントだったと思います。
・生まれながらの関係が反転する快感
・立場を超えて対等に交流する楽しさ
登場人物の関係でいうと、社会的な弱者だったケイラはジェリー、立場をおわれるテレンスはトムとして見ることもできるのではないでしょうか。
ケイラは奮闘の果てにチャンスをつかみ、テレンスは己の本分をまっとうしようとするがうまくいかない…これってまんまトムとジェリーじゃないですか!ラストで丸く収まったようにも見える2人の関係ですが、これからもやりあうんだろうなと想像できてしまうのが微笑ましい。
最後にまとめ
個人的には、インフルエンサー的なセレブ妻が「喧嘩のしかたを忘れた」といったセリフをぼやいていたのが印象的でした。
SNS時代になって久しい現代、見栄も外聞もなく本能に従うトムとジェリーを彼女はどう感じたのでしょうか。
いや、迷惑だなとしか思わないか(笑)
あんまり考えて見ちゃダメですね。
都合のいい脚本をカートゥーンアニメーションという魔法で無理やり筋道つけた印象はありましたが、まあそれでいいんじゃないかという気持ちにもなりました。
私は原作ファンよりの鑑賞だったので、本作でトム&ジェリー初見の方はどう思うのか気になるところではあります。
さいごまで読んでいただきありがとうございました。
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